句集『稲津』(87)毛糸帽子

【句集『稲津』(87)】

すっぽりと毛糸帽子をかぶる人


これは見たままを詠んだ句。電車の席に毛糸帽子をかぶって座っている人がいた。実に暖かそうで、「すっぽり」という形容詞がぴたりとはまった。


家々を光に包み十三夜


十三夜の月が下界を照らし出し、点在する家が見える。月光に包まれて静かに夜は更けていく。家の中でくつろぐ人がいる、寝息をたてている人がいる。