虚子探訪 (5) 水鶏(くいな)

【虚子探訪 (5) 】

 

「山門も伽藍も花の雲の上」

 

明治29年。どこの寺院かはわからないが、山門も伽藍も桜が満開で、まるで雲の上に居るようだなあ、という感懐の絵画的な句。

 

「縄朽ちて水鶏叩けばあく戸なり」

 

明治29年。水鶏は、夏の渡り鳥。雄の「キョッキョッキョッ」と鳴く声が、戸を叩く音に似ていることから「水鶏たたく」と言われている。陋屋を前に、水鶏の声を聞いたのであろうか。

 

「叩けども叩けども水鶏許されず」

 

明治29年。前詞に「愚庵十二勝の内、清風関」。水鶏の鳴き声を擬人化して物語風にした見立ての句。