虚子探訪(39) 藤の茶屋

【 虚子探訪(39)】

 

「藤の茶屋女房ほめほめ馬士(まご)つどふ」

 

明治39年4月23日。「馬士」は、馬子とも書き、荷物運送の馬を曵くことを事業とするもの。馬子には街道の茶店が安息場であった。藤棚のある茶店に、そこの女房をほめながら馬子たちが集まってくることだ、の句意。

 

 

「卯の花や仏(ぶつ)も願はず隠れ住む」

 

明治39年5月7日。俳諧散心。第8回。小石川高田あかなすのや(浅茅庵)。

「卯の花」はウツギの花、白い花を咲かせる。初夏の季語。出家して仏門に入ったわけではないが、俗世間から離れ隠棲生活を送っている私である。虚子32歳、「風流懺法」「斑鳩物語」等の小説執筆に打ち込んでいた時期である。