句集『稲津』(77)ヒヤシンス
【句集『稲津』(77)】
ヒヤシンスさらに強まる雨の音
家の玄関にあるヒヤシンスの鉢。外は雨、また一段と雨音が強くなり、振りが激しくなった。ヒヤシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。
胸元を大きく広げ夏来る
初夏の頃になると暑さを感じるので、女性の服装も胸元が広がった軽装が主流になってくる。西東三鬼の「おそるべき君等の乳房夏来る」の俳句を思いだす。
句集『稲津』(75)桜餅
【句集『稲津』(75)】
春筍地面押し上げ覗きけり
筍が地面から生えてくる季節。筍にしてみれば暗い地中を成長して地面を出た時は、突然世界が開いたみたいな感じなのだろうか。恐る恐る、しかし興味津々で覗いている。
桜餅一つは君に取つておく
サクラ色に着色された桜餅が店頭に並ぶ。季節のものだからと購入。美味しいけれど全部は食べない。一つは君のために残して、春の喜びをお裾分け。
スプーンはスパゲッティに必要か
昼食に茄子のアラビアータを食べる。フォークとスプーンがテーブルに並べられる。基本的に私は面倒くさいのは嫌いなので、スパゲッティを食べるのはフォークだけで済ませる。スプーンの上で麺を丸めて食べるようになったのは何時からだろう。一説によれば、イタ飯ブームが起きた90年代らしい。スプーンを使うのが上品そうに見えて流行したのだが、スパゲッティの本場イタリアでは、スプーンはフォークを使い慣れない幼児が使用するものらしい。常識と思うことも、時と場所が変わればまた違う。
すずめらに青波しぶき茄子畑
飯田龍太の句。