句集『稲津』(76)幣辛夷

【句集『稲津』(76)】

未来とは常に前方幣辛夷


未来は常に前方にあるもの、後方にはない。後ろには、過去しかない。地元には
辛夷の自生地が幾つかあって、花を見ることができる。


花虻の羽ばたきの音だけがある


虻の飛ぶ音がするが姿は見えない。花の中に潜り込んでいるのだ。のどかな春の昼、花から花へ虻が移動していく。花に集まるのは蝶だけではない。