句集『稲津』(96)恵方巻

【句集『稲津』(96)】

後ろより人現れぬ梅真白


白梅が満開に咲いている。眺めているその後ろから、梅を見に人がやってき来た。白梅の今を盛りと咲く姿を、眼に納めて今年の春を堪能する。


黙々と形無くなり恵方巻


恵方巻という食べ物が全国版になったのはまだ新しい。その年の吉とされる方角を向いて太巻き寿司を黙々と食べる。不確定な未来のある限り、人はどこまでも縁起をかつぐ。