虚子探訪 (10) 蛇穴

【虚子探訪 (10) 】

 

「石をきつて火食を知りぬ蛇穴を出る」

 

「蛇穴を出て見れば周の天下なり」

 

「穴を出る蛇を見て居る鴉かな」

 

明治31年。「蛇穴を出づ」は春の季語。第1句、「石をきつて」は、石を打ちあわせ火を発生させること、「火食」は物を煮焚きしてたべる事を言う。人類が火を使用するようになったことを句にしたもの。第2句は有名な句、周は古代中国の周王朝のこと。地中の穴から這い出してみると、世の中変わっていたという浦島太郎的な驚きの句。第3句は、穴から出たらカラスという天敵もいるぞ、ご用心という句だね。虚子先生、蛇穴の句を3句も残したのはお気に入りなのかもしれない。第2句も発想は奇抜だが、あまりたいした句とも思えないのだが。