句集『稲津』(94)影法師

【句集『稲津』(94)】

冴え返る車窓向かひに影法師


電車の窓ガラスに映しだされる自分の姿。もう一人の自分がそこにいる。ただじっと見ている。お互いに沈黙して何も語ることはない。


梅林にしばしとどまる日差しかな


梅の花が見頃の時期を迎えた。満開の花の客は人間ばかりではなく、お日様もしぱし見とれてたたずんでいたような気がする。春の日差しの暖かい今日の日である。