2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『俳句αアルファ』最終号

毎日新聞社の俳句雑誌『俳句αあるふぁ』が休刊となる。3月14日春号が最終号、特集は「俳句と生きる」。特集俳人は柿本多映。サブ企画が「震災と俳句の十年」。 真夜中に目が覚めて、どうにも寝られずパラパラと読み出す。創刊して28年、私が購読しだして10年…

句集『稲津』(51)新芽

【句集『稲津』(51)】主なき庭の木々にも新芽かな 散歩の途中にある一軒家、今は誰も住んでいない。庭に植えられた樹木は、人間たちの事情とは無関係に、春になれば今年も新芽をつける。 天井の木目眺める春休み 木造平屋建ての実家の天井は板張りだった。…

蕗の薹

家の隣は、我が家の田んぼ。土手には今年も蕗の薹が生えている。もう葉が開いてしまっているのもあるが、3つばかり摘んで収穫。今日の晩酌のつまみに、蕗味噌を作る。蕗の薹のほろ苦さがたまらない。春もいよいよ本格化。 ひとの世にのぞきこまれし蕗の薹 山…

句集『稲津』(50)蒲公英

【句集『稲津』(50)】菜の花や青空三六〇度 菜の花から上を見上げれば、青空が360度の全方位に広がっている。空はあくまでも青く、菜の花は燦然と黄色の花を地上に咲かせる。 蒲公英に包囲されたる一軒家 春は蒲公英の季節。もともとは工場の跡地に建てた…

タペストリー

アマゾンでタペストリー棒を注文したが、宅配便できたものが折れていたことは前に書いたが、メールで報告したところ、商品が再度送られてきた。今度は正常な状態で到着、早速タペストリーの製作にかかる。といっても、磁石のついている棒に熊谷守一の絵を描…

句集『稲津』(49)古時計

【句集『稲津』(49)】永き日やときをり止まる古時計 前に勤務していた会社の事務所には、骨董品の掛時計が現役で動いていたが、時々止まった。下についている振り子が揺れて時を刻むのは、なかなかいいものである。 登校の道に一列黄水仙 通勤で車わ走らせ…

菜の花

菜の花がしあはせさうに黄色して 会社の近くの舗道の花壇を、地元ボランティアの方々が世話をしていて、今は菜の花が咲いている。菜の花を見ると思い出すのは、上記の細見綾子の俳句である。菜の花の黄色は暖かな色で人に幸福感を与えてくれる。

句集『稲津』(48)春風

【句集『稲津』(48)】むかうから君が手を振る花杏 道の反対側に君がいる。こちらにいる私に気づいて手を振ってくれる。手を振ってくれる親しい関係を大事にしたい。杏の花が二人を祝福するかのように咲いている。 春風を分けて電車の走り出す 駐車場から駅…

ゲームセンターの終焉

有名なゲームセンターが、どんどん閉店しているとの記事を読む。スーパーにはゲームセンターがつきものだが、最近は閑散として人影もまばらだ。スマホにはゲームが溢れていて、わざわざゲームセンターへ行く必要は無い。技術革新が需要と市場を変えてしまう…

句集『稲津』(47)君子蘭

【句集『稲津』(47)】切り通し春の空へといざなへり 「切り通し」とは、山や丘などを切り開いて通した道路をいう。険しい地形を切り崩しているので、通過して広い所へ出る解放感があり、空へつながって行くかのようだ。 君子蘭うれしき時間長くする 君子蘭…

句集『稲津』(46)雪の下

【句集『稲津』(46)】梅が枝力集めて待ちにけり 梅の小枝には、びっしりと蕾がついていて開花の時期を待っている。出番を待つ役者のようだ。全ての力を解放して花を咲かせる、舞台は次第に整っていく。 緑葉に朝迎へ入れ雪の下 雪の下は、山地の湿った場所…

ガチャガチャ

スーパーなどに行くと、ガチャガチャと呼ばれるカプセルに入ったおもちゃの販売機が並んでいる。硬貨を入れて買うのだが、最近は1000円のガチャガチャがあってびっくりである。何が入っているのか分からないからこそ楽しいのだろう。偶然が期待以上の幸運を…

句集『稲津』(45)寒鯉

【句集『稲津』(45)】さざ波や寒鯉少し動いたか 池の面にさざ波が立ち広がっている。池の中の鯉が動いたのだろうか。静かな冬の日にも生命活動は 続いており、動いたあとにはその結果が現れる。 パンジーの顔伏せて咲くもあり 寒い季節にパンジーは花壇に…

朝風呂

日本人ほど風呂好きな民族は他にないのでは。日本の国土が森林、水量ともに豊富で、湯をわかすのに困らなかったのが大きな理由だろうし、各地に温泉が湧き出て、湯につかる快楽が広く伝わったということもあるだろう。基本的に風呂は毎日入るのだが、入りそ…

句集『稲津』(44)大根

【句集『稲津』(44)】 山影を足早に抜け冬日向 寒い冬の日は日向が恋しくなる。道を歩いていても山の影になっている所は、早く出たいと思うのか、自然と早歩きしている。人間は明るく暖かい方を選ぶ。 大根のふくらみ土の中にあり 大根は白く太い身をして…

未知との遭遇

外山滋比古は、文章の読み方には2種類あるという。一つは、知っていることについて書いてある文章、すなわち既知を読むアルファー読み。もう一つは、内容が新しいこと、考えたこともないことだったりする文章、未知のことを読むベータ読み。 たいていの人が…

句集『稲津』(43)群青

【句集『稲津』(43)】群青に寒星一つ灯りけり 俳句結社「南風」に入会して最初の投句。夜になり一面のブルーとなった空に一番星を見つけた。この頃の通勤は山間の県道を自動車を走らせていた。 冬の雲天路歴程いま途上 雲が形を変えながら動いていくのを見…

村木道彦

名古屋の鶴舞にある山星書店で『村木道彦歌集』(国文社、1979年初版)を見つける。この間、岐阜市の徒然舎で『存在の夏』に出くわしたばかり。古本巡りは、こうした思わぬ出会いが、心ときめかすのである。俵万智など後進に強い影響を与えた、切れのよい艶…

句集『稲津』(42)雪割草

【句集『稲津』(42)】 雪割草夢の続きを咲きにけり 三橋鷹女の句「みんな夢雪割草が咲いたのね」に対するオマージュ。孤高の女性俳人三橋鷹女を断固支持する。 たちまちに闇抱き寄せし冬茜 冬の日はあっと言う間に暮れてゆく。真っ赤な夕焼けは闇を抱き寄…

高清水

地元スーパー「バロー」で、秋田県の名酒「高清水」が日本酒コーナーに並べてあるのを発見。昔、秋田に出張したときに初めて知った銘柄。ラズウェル細木の『酒の細道』でも紹介されていた。田舎暮らしではなかなか目にすることもなかったが、懐かしく生酒を…

句集『稲津』(41)涎

【句集『稲津』(41)】「青田 2015」へ移ります。 初夢の枕にたらす涎かな 初夢を見た。内容は覚えていないが、いい夢だったのだろう。枕のカバーによだれの跡がついている。眠りの中では、人は皆幸せなのです。 澳残るなほ熱かりしどんどの火 正月終わりの…

無限もやし

最近の酒のつまみでマイブームは「無限もやし」。もやしと一緒に東洋水産の味付け乾麺が売っていて、試しに買って作ってみた。茹でたもやしに混ぜるだけなのだが、これがなかなかいけます。トッピングすると味に変化が出て面白い。ツナ缶やらレタスやら色々…

句集『稲津』(40)爪

【句集『稲津』(40)】骨届く足の冷たさ冬ざるる まだ未明、電車に乗って会社に向かう。足が冷たく、骨まで届くかのようだ。骨身にしみるという言葉ができたのがわかる。電車の暖房が効くのはしばらくかかる。 爪切るは生きてゐること年用意 生きていればこ…

家はなぜ必要か

直立歩行をする人間は、身体を休めるために横になって睡眠をとることが必要である。睡眠中は無防備だから安全に眠るためには、自然の中でよりも、人工的に囲みを作って外の世界と遮断されていた方がいい。 普段の生活の中では、家以外で身体を横にできる場所…

句集『稲津』(39)トランプ

【句集『稲津』(39)】トランプの一人占ひ炬燵出ず 炬燵に入るともう出られない。一人でトランプ占いなどしていれば尚更である。さて占いのご宣託はどうでたのだろうか。無事平穏とか、果報は寝て待てとか。 手袋に五本の指を確かめる 手袋をはめるには、五…

宅配便トラブル

アマゾンでタペストリー棒を注文した。熊谷守一つけち記念館で飾られていたタペストリーが洒落ていたので自分でも作って見ようと思ったから。注文した品物が届くが、佐川急便から商品に異常があるとの連絡が入る。木製の棒が真っ二つに折れている。発注先は…

句集『稲津』(38)寒気団

【句集『稲津』(38)】感嘆詞つけて寒さを呼びにけり 「ああ寒い」「おお寒い」とか普段口にするよね。いちだんと寒いという気持ちが感嘆詞に込められている気がする。 寒気団御一行様ご到着 天気予報は寒気団がどこに位置しているかを説明している。宿屋の…

PLAY BACH

バッハが好きである。だから、グレン・グールドもよく聞く。 この間ブックオフでCDを物色していたら『PLAY BACH』を見つける。バッハの文字に惹かれて購入。ジャック・ルーシェのバッハのジャズ演奏シリーズ。私の購入したCDはPART2なので、しばらく楽しめそ…

句集『稲津』(37)富有柿

【句集『稲津』(37)】富有柿まばゆきばかりの照返し 富有柿は甘柿の一種で、岐阜県本巣市が発祥の地。形は大ぶりで果肉はきわめて甘く、正岡子規に見せたら、きっと毎日食べただろう。岐阜といえば富有柿、岐阜県の誇る食べ物。 霜の夜心音聞こゆ胸奥処 心…

プロデュースの基本

木﨑賢治の『プロデュースの基本』(インターナショナル新書)を読む。評論家の話より、専門家の話の方が圧倒的に面白い。多くの人にとって、中学生、高校生のころに聴いた音楽がいちばん衝撃的だったと思います。音楽知識も経験もなく、何かと比較すること…